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不安と欲望: 過大評価された2つの感情

2016.12.3 | ,
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From:マイケル・マスターソン

賢く効果的にセールスライティングをする方法

私が広告コピーの書き方を学んでいた当時は、不安や欲望を煽ることが大反響につながると一般的に考えられていました。
誰が最初にこの見解を示したのかはわかりませんが、当時は顧客と直接取引するダイレクトマーケティングのお決まり事でした。いわゆる「専門家」や私の尊敬するセールスライターたちは皆、この方法を取り入れていました。表面的に見ればとても良さそうな方法で、私もそれにならうべきだと言われてきました。
しかし私は、とてもバカげた方法だと思っていました。
私は心理学の学者ではありませんが、不安と欲望の2つの感情だけで購買意欲を煽るのは間違っている、と当時から思っていたのです。

不安や欲望を煽るよりも説得力のある方法

私は、母親や先生、そして同僚、妻、子供達などと関わってきた30年間の経験から、不安や欲望を煽るよりも説得力のある方法が他にもたくさんあることを身にしみてよくわかっていたのです。
もちろん子供が暗闇でヘッドライトなしで自転車に乗るときなど、不安は時には必要です。しかし多くの場合、不安は人の感覚を鈍らせてしまう厄介な感情です。不安以外にも購買意欲を刺激する感情や欲求はあるはずです。
では、欲望は?私が育った家庭では、欲望は大罪であり、「悪魔の道具」だと教えられてきました。ですから、自分は欲深くなりなくないと思っていたのです。
私も不安や欲望を抱えて生きています。しかし、その感情を超えたところで自分のキャリアを積みたい、自分のような考えの人とビジネスをしたい、と思っていました。
私は見返りを求めず他人の利益を優先できるような人間ではありません。ですから、欲深く不安を抱えている人達とは関わりたくはありませんでした。友達としても、ビジネスパートナーとしても、顧客としても、そんな人は信用できません。
私はマーケティングを仕事にする随分前から、本を書いたり大学で教えているような多くの専門家が知らないような「人々を納得させる方法」を身につけていました。
通説が必ずしも正しいわけではないと判断する力もありました。
喜ばしいことに、、不安や欲望に関する根拠のない説はどんどん廃れてきています。それはビル・ボナーの功績だと私は思っています。1970年代前半に行った彼のプロモーションは、商品を売るために不安や欲望以外の感情に訴えるものでした。ゲーリー・ベンシベンガやクレイトン・メイクピースも「不安・欲望説」を否定するような広告コピーを書いたのです。
そして、ロバート・B・チャルディーニというアリゾナ州立大学社会心理学教授が完全に流れを変えました。皮肉なことに彼が著書「影響力の武器」を発表したのは、マーケティングというものに消費者が騙されないようにという理由からでした。この本の中で彼は、欲望や不安を煽ったアプローチではなく、もっと巧妙で賢いアプローチを利用した多数の成功例を分析し人々に警鐘を鳴らしたのです。
残念ながら彼がターゲットにしていた消費者には全くといっていいほどこの本は読まれませんでした。しかし、説得の心理に基づいた見解をプロモーションに応用したマーケッターの間で大ヒットとなったのです。

チャルディーニが考察した人間の心理とは?

それは次のようなものです。
・受けた恩は返したくなる
・表明した約束は守ろうとする
・どうするべきかの決断をするとき、他人に合わせようとする
・親しい人の要求は断りにくい
やがてチャルディーニは、マーケティング界の権威となりました。彼の後世の著書やセミナーでは、彼が嫌った巧妙なマーケティングの仕方を説いています。彼自身にとっても、私たちにとっても、これは良いことだったと思います。(「私たちにとっても」というのは、私が思うにこの種のマーケティング法はより効果的で誠実だと思うからです。これはまた別の時に詳しくお話ししましょう)
前述の通り、不安や欲望に関するバカげた「ルール」は廃れてきました。しかし完全に消え去ることはないでしょう。
なぜでしょうか。いまだに不安や欲望が一番購買意欲を刺激する感情だと思っているマーケッターはまだまだたくさんいるのです。彼らの示す根拠を見ていきましょう。

「不安」の感情を使う時に注意するポイント

まずは不安についてです。
不安とは原始的な感情です。人間の進化過程の早期段階で備わっていた、生きていくには必要不可欠なものです。
神経生物学者いわく、原始的な感情とは「爬虫類脳(原始脳)」に由来している「本能」なのです。それに打ち勝つことは困難でしょう。
セキュリティアラームやベビーモニター、各種保険商品に至るまで、あらゆる商品販売において不安が効果的なのは間違いありません。
しかし1つの感情が強力だからといって、全ての売買に利用するべきではありません。理由は簡単です。人間が不安に直面した時に示す原始的反応とは、「戦う」「逃げる」「動けなくなる」の3つのうちのどれかです。セールスライターが顧客に望む反応とは、このうちのどれでもありません。
投資コンサルタント業務では、不安を多少煽ることが役立つ時もあるでしょう。しかし不安が膨らむと、広告への反応が薄くなります。貯蓄や雇用保障の心配を煽るのには、軽度の不安が効果的です。しかし、不安を掻き立てた後には、すぐに希望を持たせなくてはいけません。

なぜ、「欲望」にアピールして集めたお客さんは、離れていってしまうのか?

そして、欲望についてです。
不安・欲望アプローチ主義者は、不安を基に顧客の欲望へもアピールすることが賢明だと説いています。
しかし私が思うに、これではいらない顧客を引き付ける羽目になるでしょう。ビジネスは、騙されやすく欲深い人とは成り立ちません。一時的に好成績をあげられるかもしれませんが、持続的に利益の上がるビジネスにはならないでしょう。
約半年前あるセールスライターと話す機会がありました。彼は、不安と欲望を用いたプロモーションで素晴らしい成功を上げました。実際、彼のキャンペーンの売上手数料は、100万ドル以上になるはずでした。「なるはずでした」というのは、不安と欲望のプロモーションにつられた商品を買った人の多くが返金を求めたからです。さらに、返品をしなかった人はプロモーションにすぐに飛びつく人々なので、顧客となって他の商品を買ってくれる可能性は低いでしょう。
一時的には成功したけれど、結局はほとんどの顧客を失ってしまったのです。
私は彼に他の感情へアピールする方法を学ぶようにアドバイスをしましたが、耳を貸しませんでした。彼は自分の実績を利用して新しい仕事先をだますように引き込み、結局その新しい仕事先も失望させ続けてきたのです。噂では、今では広告コピーを買ってくれる人を探すのに苦労しているとか。(そういえば、今朝彼からメールが来ていました。まだ読んでいませんが、やっと「目を覚ました」のかもしれません)
欲望は機能しません。何年も商品を買い続けてくれる顧客は、自分たちを強欲だと思っていないからです。彼らは成功を収め富を築きたいと思っていますが、強欲な人間にはなりたくないと思っているのです。

以下のことはしっかりと覚えておいてください。

セキュリティアラームやベビーモニターのような安心を売りにする商品の販売にだけ不安を用いること。他の商品に関しては、不安を少し煽るくらいはいいかもしれませんがやりすぎは禁物です。そして顧客に期待を持たせること。 期待は不安よりもはるかに強力な売り込みになるのです。
そして、欲望を煽るようなことは絶対にしないこと。欲望に縛られたプロモーションでは、あなたのビジネスを台無しにするような顧客しか飛びついてきませんよ。

マイケル・マスターソン

年商100億円以上の会社を2社、50億円以上の会社を2社、10億円以上の会社を10社以上保有、ダイレクト・レスポンス・マーケティングの世界で屈指の実績を誇るスーパー起業家。その事業構築の手腕は多くの起業家、マーケッターから高く評価され、推薦分などを書くことがないジェイ・エブラハムが著書に序文を寄稿するほど。AWAIのファウンダーの一人であり、450,000人の会員を誇るメールマガジン「Early to Rise」のファウンダーでもある。

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