From:リッチ・シェフレン
前回の記事で、私は「先延ばし」という問題の深刻さについて、次のような少々気が滅入ることを書きました。
「この先延ばしという、成功を台無しにしてしまう問題について、これほど多くの研究結果や情報や意見があるのに、なぜいまだにこの問題で苦労している人がいるのか?」
何が言いたいかというと、出回っている大量の情報をくまなく探せば、先延ばしをしなくなる解決策が1つくらいあってもいいはずです。そう思いませんか?
これだけ情報がありながら、いったい効果があったと言えるものはありますか?
ありませんよね。これも前回の記事で書いたことですが、「ほとんどの人が気づいていない問題は、先延ばしについての、ある分別」です。
この分別がないと、この問題のリアリティがはっきり見えてきません。この分別がないと、「先延ばしの対処法」を知って解決に至る希望をもっていても、知ったときには手遅れ、ということになります。では、その分別とは何でしょうか?
物事を先延ばしにする傾向をあなたがもっているのは、それがあなたの遺伝子に深く組み込まれていることが原因です。先延ばしは「デフォルト」の反応なのです。実は「あなたが選んでやっていること」ではないのです。
というより、「それがあなた」なのです。
人間の脳は、数百万年かけて進化してきました。長い年月をかけて、自己防衛だけに関心を傾ける条件反射的な「爬虫類」脳から、より複雑な考える頭脳へと進化してきました。偉業を達成するとか、自分のビジネスを起業して100万ドル儲けるとか、あれこれ構想を練る能力を獲得したのは、長い歴史から言えば、比較的最近のことなのです。
この進化の階層については、心理学者のアブラハム・マズローが「人間の欲求5段階説」を用いて説明しています。
一番下の階層は、基本的な「生理的」欲求です。住居、食事、セックスなどがこれに入ります。洞窟に住んでいた私たちの祖先はこの基本的な欲求に基づいて行動していました。その1つ上の階層は「安全」欲求です。そのもう一つ上の階層は「社会的」欲求であり、そこからさらに進化した階層が「尊厳」欲求です。そして、一番上の階層が「自己実現」欲求です。やれやれ、説明が長くなりました!
しかし、ここで壮大な皮肉があります。私たち人間はこれまで数百万年もかけて進化してきたのに、いまだに、このピラミッドの一番下の階層である基本的欲求にかられて行動することが多いのです。つまり、自己防衛という人間の本能です。この遺伝子に組み込まれた自己防衛本能が、私たちのこれまでの進化を実は規定しているのです。
先延ばしをやめようとするときに、この根本的かつ重要な事実を考慮に入れる起業家はまずいません。
さて、この「生まれつき」の影響を受けやすい人というのは確かにいます。
アラン・ケイ(我がストラテジックプロフィッツのマーケティングの忍者のアランではなく、グラフィックユーザーインタフェースのパイオニアとして有名なテクノロジーの分野での伝説の人物)がこのことを次のように明確に書いています。
「典型的な重役会議に出席するようになっても、私たちは皆、一皮むけば、ブリーフケースを小脇に抱えた、ただの原始人である。」
私たちが何者であっても、どんな職業についていても、私たちの脳がどれほど進化したとしても、私たちの考えがどれほど洗練されたものになっても、私たちは皆、いまだにこの最も基本的な生まれつきの欲求にかられて行動することがあるのです。
私たちはいまだに、自分の健康や幸せを害する脅威だと感じるものから本能的に逃げようとします。
今は幸いなことに、タールピットに落ちて化石になる心配や、肉食獣に食べられる脅威はありません。
しかし困ったことに、今日私たちが直面する脅威は、リアリティのあるものとは限らないのです。私たちは、自己、自尊心、自分のエゴ、自分の収入などを脅かすものや不快に感じられるものはすべて、自然な反応としてそれを避けようとします。
ためらったり、先延ばしにしたりします。どうしても必要になるまでは、それに対処することはありません。自己防衛の自動的発動が、生まれつき備わっているのです。それがあなたなのです。
ここで、目を背けたくなる真実を教えましょう。あなたは、先延ばしせずにいられないのです!数百万年に渡る人間の行動の進化をなかったことにはできません。あなたはそのようにできているのです。そのことを認めてください!向き合ってください!そして、受け入れてください!
大きな利益とその向こう側へ
リッチ・シェフレン
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