From:寺本隆裕
カネを払う側から受け取る側になりたい。
日常的にそのようなことを考えてしまうのが我々起業家の宿命でしょう。
たとえば携帯電話を契約すると、契約したその月から何ヶ月も何年も、当たり前のように料金を支払い続けることになりますが…もし、その料金を「支払う」側ではなく、「受け取る」側になれるとしたらどうでしょうか?
それと同じように、たった一度だけ売れば、毎月毎月、安定した収入が入ってくる。しかもその金額は毎月少しずつ積み上がって増えていく。そんな夢を抱いた起業家が立ち上げたビジネスが今、どんどん伸びてきています。例えば、Netflix(ネットフリックス)、Dropbox(ドロップボックス)、Surveymonkey(サーベーモンキー)などの、いわゆる「会員制ビジネス」です。
日本でも、衰退していると言われているCD販売などの音楽業界の中で、スマホアプリなどでお馴染みの定額で聴き放題の分野「サブスクリプション(会員制)」は前年比113%伸びています(日本レコード協会発表資料2015年第4四半期より)。
起業家にとっての会員制ビジネスの最大の魅力は、何と言っても事業の安定性にあります。単発の商品を売るだけのビジネスだと、毎月毎月、ゼロから売上を積み上げてその月の売上を作っていかないといけません。が、会員制ビジネスの場合は、毎月の売上がある程度「確保」されています。
そのため、
・数カ月、数年先の売上予想ができるため、長期的な施策を打ったり、積極的に投資して事業拡大のスピードを早めることができる
・毎月の努力が「ストック型」として積み上がっていくので、毎月毎月売上を増やしやすい
・何より、安心。
などなど。
ちなみに、「継続課金ビジネス」というと、公共料金や家賃など「毎月課金」のものがイメージしやすいですが、「毎年課金」するタイプのビジネスもたくさんあります。
例えば、クレジットカードの年会費や「資格の更新」なども年単位でお金を支払っていく会員制ビジネスモデルです。また、地域によっては、部屋を借りたときに「更新料」として毎年家賃の数カ月分や一定のお金を大家さんに支払う、というビジネスもあります。
それに、年単位や半年、3ヶ月単位などで申し込んでもらえれば「毎月、いつやめられてしまうかわからない」という心配も軽減されます。また人によっては、毎月3000円ずつ薄く課金されていくよりも、1年分をまとめて支払う方が気持ち的に楽だという人もいるでしょう。
会員制ビジネスをやるとき、あるいは既存の会員制ビジネスを改善するとき、「毎月」以外のチャージ期間を再考してみると、発想の幅が広がるでしょう。
でも会員制ビジネスを成功させるためにはいくつものクリアすべき課題もあります。例えば、、、
・どんな商品・サービスを扱えばいいのか?
・途中でやめられないようにすればどうすればいいのか?
・どうやって会員を集めるか?
などなど、、、
これについて「日本人が知らない定期収入のビジネス戦略 シリコンバレー発!会員制ビジネス起業術」のロビー・ケルマン・バクスター氏は、「ボトムアップのアプローチ」を取らないことが多くの起業家の失敗の原因だ、と指摘しています。
建物を建てるとき、土台から作っていくように、、、会員制ビジネスを作る時も、土台から作っていくアプローチ(ボトムアップ)を取るべきだということです。
本書p63.
結婚記念日に夫とマクドナルドに言ったのに、ムードもキャビアもシャンパンもなかったからあの店は嫌い。私がそう言ったら「マクドナルドは結婚記念日のディナーのために設計された店じゃない。あれは手早く安くいつも同じ料理を提供するために設計された店だろう」という答えが返ってくるかもしれない。
マクドナルドは自社ブランドが表すものをしらしめるという点で素晴らしい仕事をしている。それ以上に、一貫した体験を築くというもっと素晴らしい仕事をしている。マクドナルドは世界中にあり、どの店舗でもポテトはマクドナルドのポテトの味がするし、ビッグマックはマクドナルドのビッグマックの味がする。
この明瞭なメッセージの重要なところは、
と伝えている点にある。マクドナルドの「販売ファネル(訳注:ファネルとは漏斗(じょうご)の意。マーケティングでは、見込み客から受注へと絞り込まれる様子をたとえて「セールスファネル」という)の最上層にはいくつか「ムダ」がある。つまり、マクドナルドのブランドや広告に慣れ親しんでいても、マクドナルドで食事をしようと思わない人々、つまりマクドナルドの顧客にならない人々が大勢いる。だが、マクドナルドの店舗に入ったときに自分が見たものに驚く人は、ほぼ皆無と言って差し支えないだろう。
典型的な”販売見込み客取得ファネル”を図に示した。自社ファネルの各層の間の動きを追跡すると、新規会員をどう獲得できるか(そしてどうして獲得できないのか)が見えてくるので、これは重要な手順である。
最上層はブランドの存在を「認知」しているがまだブランドと関与していない人々、最下層は最も「忠誠心ある顧客」を表す。最上層の人々、つまりあなたの商品やサービスを「認知」している人々のうちごく一部が、その後詳しいことを知りたいと思うようになる。
さらにその一部が「試用」の層に進み、その商品やサービスを試してみる。そして試用を体験した人々の一部が「契約・会員登録」の層に進み、そこで会員となるのだ。
多くの企業は上の図のように最上層の幅が広く最下層が狭い状態に満足している。より多くの人々に自社と関与してもらい、自社製品を試してもらうのはいいことだと考えているのだ。だがしかし、ファネルには多くの「ムダ」が含まれている。つまり最上層にいる、組織のブランドに反応を示した人々の多くが顧客にはならないし、もしかしたら顧客として「適切でない」可能性があるのだ。
見込み客取得ファネルの代替手段に示された「シュート(訳注:上から下に落とす装置)」がある。シュートでは最上層から最下層までの幅がすべて等しく、最上層から最下層までの移動がすばやく行われる。ファネルの幅を狭くする(つまり、最上層の「認知」の焦点を狭めて各層にいる見込み客数を最大化する)と、シュートに近づくという原理だ。
会員制ビジネスでは、取引基盤のビジネスよりも、マーケットのターゲットを絞り込むことの重要性が高くなる。会員制ビジネスが収益を得られるのは、会員が長い間とどまってくれる場合のみだからだ。したがって、無料の「試用」にかかるコストをいくらかけても、その見込み客がそのサービスを気に入ってくれるような種類の人々でなければ「契約・会員登録」をしてもらえず、ファネルに「ムダ」が生じる。つまり、組織が支払った「試用」コストがムダになり、がんばってもがんばってもうまくいかないのだ。
そのため、すべての努力はファネルの最下層から始める必要がある。つまり、最終的に「忠誠心ある顧客」になってくれる可能性の高い人々に最初から的を絞る必要があるということだ。そうすれば、組織から会員に与える利益とターゲット顧客のニーズの間にズレが生じることはなくなるはずだ。
これらを実施するためには、会員制ビジネスのターゲット顧客が誰なのか正確に把握しておく必要がある。そして重要なのはファネル内の各層に明確な定義を設け、日々その遷移率を追跡することである。スタートとしてまずは、ファネルの各層を通過した人数だけを確認してみよう。ある層から次の層へ移動しなかった人々はファネル(漏斗)に開いた穴から漏れた人々、つまり「ムダ」に該当する。
さらに、加入した会員が確実にとどまるようにしたい。事業を立ち上げたばかりの場合は手こずりがちだが、すでに事業が確立されているなら、会員が最低でも30日間(習慣の確立に十分な長さ)とどまるかどうか待ってみる価値がある。会員が支払う料金と、会員が受け取るメリットのバランスがしっかり取れていれば、会員はとどまってくれる。
ファネルでは見込み客が会員になったあとのイベントも追跡する場合がある。新規会員の行動、友人への口コミへの有無、忠誠心ある会員になる人と脱会する人を分けるものを測定できれば、ファネルはメンバーシップ志向の組織にとってより素晴らしい価値をもたらしてくれる。
こうしたファネルの形状は「砂時計」に似ており、ファネルの最下層を「通りすぎて」広がっていき、取引の重要性を強調する。このファネルがあれば、新規加入会員が初回取引後に大幅な増収に及ぼす影響力を見て取れる。砂時計ファネルを利用すると、取得済みの顧客を保持することの重要性をいっそう強く実感することができる。
会員が支払う料金と、会員が受け取るメリットのバランスを取ることが必要不可欠である理由はここにある。オファーの事を知った見込み客に心から気に入ってもらえるという確信がなければ、オファーを修正するかターゲットを見直す以外のことに投資する意味はない。
ターゲットを間違えているか、オファーが不完全である可能性がある。
いずれにせよ、すぐ脱会してしまう上にコスト負担を強いられる会員の取得に投資する理由はない。料金とメリットのバランス調整は最も重要だが、多くの会員制ビジネスがこれをないがしろにして失敗する。
これは、
日本人が知らない定期収入のビジネス戦略
「シリコンバレー発!会員制ビジネス起業術」
の書籍からの7ページほどの引用です。本書にはこのような実践的なアドバイスが満載です。
会員制ビジネスを成功させるためにどうすればいいか?続きはぜひ書籍を読んでみてください!
著者は、世界中で6500万人以上の会員を持つNetflix(ネットフリックス)をはじめ、世界最大手のネットアンケートソフトのSurveyMonkey(サーベーモンキー)。Yahoo!やオラクルなどをクライアントに持つ、定期収入型ビジネスを成功させるエキスパートです。とはいえ、彼女が教えている方法は、大きな会社のためのものではありません。もちろん我々のようなスモール・ビジネスにも使える方法です。
たとえば、、、…続きはこちら
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