From:ダン・ケネディ

成功への方程式について、私の基本的な考え方を話したいと思います。

まず、私の考え方をよく表わしている、ある話を紹介します。

ラビ（訳注：ユダヤ教指導者）としてとても尊敬されていた人が、高齢になって臨終が近づいていたときの話です。

ベッドの周りには、その年のラビ養成学校の生徒たちが集まっていました。慣例として、ラビは次のような順に生徒を並ばせました。成績が一番良い優等生がラビから最も近い位置に、そして成績順に並ばせ、成績が一番悪い生徒、つまり誰も関心を持たないような劣等生が、ラビから最も離れた位置にいました。

臨終間際というときに、ラビのお気に入りである優等生がかがみ込み、ラビに聞きました。「ラビ、あなたが去ってしまう前に、最後にどうか私たちに教えてください。ひと言で言うと、人生の意味とは何でしょうか。」

この生徒はラビのひと言を切望していたので、ラビは他に選択肢がなく、何か答えるしかありませんでした。その生徒に向かって聞き取れないくらいのかすれた声で答えました。「人生とは川のようなものである。」

すると、優等生は次に並んだ生徒のほうを向き、「ラビは、人生とは川のようなものである、とおっしゃっています。次の人に伝えてください」と言いました。

その生徒は次の生徒に伝えていきます。「人生とは川のようなものである。次の人に伝えてください。」そして、最後尾の劣等生まで伝えられました。

誰も関心を持たないようなその劣等生は、伝えた生徒を見返して言いました。「人生とは川のようなものである？人生とは川のようなものである、とはどういう意味でしょうか？ラビに聞いてください。」

そして、この質問は先ほどとは逆方向に伝えられていきました。「最後尾の生徒が、人生とは川のようなものであるとはどういう意味なのか、と聞いています。」生徒たちは、ラビのひと言を理解できない劣等生が質問をしていると伝えていきました。

これが先頭の生徒まで伝わり、再びかがみ込んで、臨終間際のラビに「人生とは川のようなものである、とはどういう意味でしょうか？」と聞きました。ラビはこう答えました。「わかった。人生とは川のようなものではない。」

この話で問題になるのは、おわかりのように、もし劣等生の質問が伝わる前にこの尊敬されていたラビが息絶えていたら、このときの生徒たちはラビになってその後10年ほどは、「人生とは川のようなものである」というテーマで説教していただろうということです。

地位の高い人がある一瞬に発した神秘的な魔法の言葉もあれば、この劣等生のような挑発的で愚かにも思われる質問も多くあることをあなたも知っているでしょう。

実はそれほどでもないのに、長年名言だと思われている言葉があります。要するに、さまざまな分野の成功者を見たり実際に会って話したりすると、成功者と一口に言ってもそれぞれまったく異なるタイプの成功者がいるとわかるのです。

つまり、誰にでも当てはまるただ1つの成功への方程式はありません。

ダイエット業界にいる私の友人が、次のように話していました。もし誰でも成功するダイエット方法があるとしたら、その方法は1つだけでしょう。でも、今週のナショナル・エンクワイアラー紙（訳注：ハリウッドのゴシップなどを取り扱う雑誌）を開いてみると、500通りものダイエット方法が掲載されています。

誰にでも当てはまる成功への方程式が1つあるとしたら、それについて書かれた本は1冊しかないはずであり、成功に関する本は他の誰も書いていないはずなのです。

−ダン・ケネディ