From:北岡秀紀
From:北岡秀紀
「お客が言っていました。」
これほど便利な言葉はありません。しかし、これほど危険な言葉もありません。
例えば、先日もこんなことがありました。
あるクライアントがあるイベントについて顧客アンケートを取った時のこと。
「コーヒーはブースに取りに行く形ではなく、スタッフが席に持ってきてほしい」
というような声があがりました。
確かに、コーヒーを持って行ってあげれば親切かもしれません。しかし、そのイベントは比較的大きなもの。それをしてあげるには、スタッフを倍増する必要があります。
リソース的には不可能ではありません。しかし、それだけのスタッフを動員する手間と費用をかけることなのか?
それが議論になりました。
結論から言うと、このコーヒーを各席に配るというのはやらない、と決まりました。
その理由は。。。
「コーヒーを配った方がいい」
と言ったお客が半年前にそのイベントに来ただけのお客だったからです。
リソースには限りがある
お客の声を聞け、とよく言われます。しかし、それは言われたことを全てやれ、という意味ではありません。
小さな会社のリソースには限りがあります。
・やったほうがいいこと
・やるべきこと
に分ける必要があります。
それを分ける一つの基準が「誰が言ったか?」です。
「コーヒーを配った方がいい」と言ったのがロイヤルカスタマーだとすれば、それはさらに検討する必要があったでしょう。
しかし、そうではなく1度きりのしかも半年前のお客。重要度は当然、下がります。
印象 ≠ 金額
一度きりのお客や新規客というのは、自社の考え方・文化を理解してくれていないことが多くどうしても声が目立って聞こえます。また、違う考え方・文化からの言葉なので、心に残ったり、感情的に揺れ動きやすくなります。つまり、どうしても印象が強くなりがちです。
しかし、印象の強いお客と使ってくれる金額が大きいお客は全く違います。あなたが声をより真摯に聞き取るべきは、金額が大きいお客の声でしょう。
一度きりのお客や新規客をないがしろにしろ、ということではありません。特に新規客が入ってこなければ、ビジネスは死ぬわけですから、謙虚に聞くべき部分もあります。
ただ、行動の優先順位は印象ではなく、明確な基準でもって決めなければなりません。当たり前と思われるかもしれませんが、自分の意思決定を振り返ってみると、なんとなくの印象で意思決定していることは多いです。
特に、「お客が言ったから」というのは、道徳と同じで非常に反論しずらいものです。結果、お客が言ったこと=やるべきこと という思考停止を生んでしまいます。
それは人間だから仕方がない部分はあります。しかし、そうなりがちだと理解しているかいないかだけでも、意思決定の仕方が変わってくることは、賢明なあなたならお分かりいただけると思います。
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