From:寺本隆裕
From:寺本隆裕
横浜で部屋探しをしていた時の話。
5年くらい前、僕は東京にあるITの会社にシステムエンジニアとして勤めていました。それまでは千葉から通っていたのですが、大阪の田舎町出身の僕としては、地元の友達に「今、横浜に住んでんねん」という言葉を発したかったがために、横浜に引っ越すことにしたのです。
土地勘も全くなかったのですが、僕ら(僕+嫁)はとりあえず東京の会社への通勤が便利なところというところで、JRの「横須賀線・東海道線」のとある駅の周辺で探すことにしました。
駅の近くの駐車場に車を停め、いくつかの不動産屋を見て回ると(住んでいた千葉から東京都を横断して横浜までは、ちょっとした旅行です)、不幸なことに、そのシーズンはあまり空き物件が豊富じゃないシーズンだったらしく、なかなかいい物件に巡り合うことができませんでした。
でも一度「引っ越す!」と決めたら、気分はもう横浜っ子気分。みなとみらいのおしゃれなカフェで、エスプレッソを飲みながらハードカバーの文庫本を読んでるようなイメージです。はるばる2~3時間かけてやってきたし、今さら「何カ月か待って、物件が動くシーズンにしよっか」などという気分にはなれません。(こういうことって、ありますよね?)
というわけで急きょ、その晩泊まるための横浜のホテルを確保(予約)し、じっくり2日間かけて部屋探しをすることにしました。
「間違いセールス」の始まり...
何軒か回った不動産屋のうち、なんとかその中のひとつの不動産屋さんに気になる物件を見つけました。
物件は2つあって、一つは駅の東側。一つは駅の西側にある物件です。
二つとも見たかったのですが、「西側の物件はまさに今商談中で、もうすぐ決まりそう」だということで、東側の物件だけをとりあえず見せてもらうことにしました。
部屋探しの基本は、「その物件そのもの」だけじゃなく、「物件周辺の環境」をチェックすること。というわけで、不動産屋のおっちゃんと一緒に、東側の物件までは駅から実際に歩いて、環境をチェックしながら見ることにしました。
駅の周辺には色んなお店が並んでいてとても便利そうです。スーパーもあちこちにあるし、肉屋や魚屋、ファミレスやカラオケなどもあります。不動産屋のおっちゃんに言わせると、
「駅の東側は、西側に比べてお店が多く、生活には便利ですよ」
ということ。確かに、物件周辺は住宅が多く割と静かな感じなのですが、そこから少し歩くだけで生活に必要なものは何でもそろいそう。便利そうです。
あとで西側の環境も見てみましたが、東側の便利さとは比べ物にならないくらい閑散としています。雑居ビルみたいなのがちょろっとあるだけで、「買い物したい」と思えるような店はほとんどありません。
不動産屋のおっちゃんも、「西側に住んでる人は、駅のガードをくぐって、東側まで買い物に来てる人がほとんどですね。だから東側の物件は西側の物件に比べて相対的に家賃は高いんですが、毎日の便利さのことを考えると、東側の方がお勧めですよ。」とアドバイスをしてくれました。
物件に到着して中をチェックしてみましたが、まぁまぁ、悪くない感じかな、という印象です。駅までも歩いて10分くらいだし、生活や通勤は便利そうです。
「とりあえずキープやな」
ということで、5万円の手付金を預け(当日なら返却保証付き)、その物件を押さえておいてもらうことにしました。
嫌な予感
その後不動産屋を変えて何軒かの物件を見てみましたが、あまりしっくりくるような物件に巡り合うことはなく、なんとなく「さっきのところで決まりかな」という雰囲気になってきました。
空も暗くなり始めてきたので、そろそろさっきの東側の物件で「決めます」という返事をしなければいけません。
携帯をポケットから取り出し、不動産屋に電話をかけようとすると、突然嫁さんが、「なんとなく、嫌な予感がする。もう一回だけさっきのところ見せてもらえるように頼もう」と言いだしたのです。
内心「めんどくさいな~」と思いながらも、電話のついでだし平日でヒマそうだったので、もういちど不動産屋のおっちゃんに見せてもらえるよう頼み、現地集合することにしました。
異臭
不動産屋よりも先に着いた僕たちは、さっきと何やら感じが全然違うことに気付きました。物件周辺に、何やら異様なニオイ。強烈なクサーいニオイがしているのです。昼間はなかったニオイです。
トイレのニオイ?
動物園のニオイ?
この強烈なにおいの原因が何なのか?僕らは周囲を探しました。下水がどこかから漏れている様子もなく、マンホールのフタが開いているでもなさそうです。冬だったし、何かが腐っている感じでもありません。
間もなく不動産屋のおっちゃんが合流。「何でしょうねー。このニオイは。」と、一緒にそのニオイの原因を探すこと5分・・・
「あ、こんなところに牛小屋がありますねー」
と、おっちゃん。え?牛小屋?
おっちゃんのいる方に行ってみると、ブロック塀に囲われて外からは牛小屋だとはわからないものの、耳を澄ませば、かすかに中から「モー」という牛の声が聞こえます。(しかもそこは、僕らが借りようとしていた物件から、細い路地を一つはさんだだけの場所です。)
思わず不動産屋でもらった「物件周辺住宅地図」を見てみると、その場所、普通の一戸建て1つ分くらいの小さな土地に、「○○農場」の文字が・・・
強烈なニオイの原因は完全にコレです。なぜ、こんな住宅街のど真ん中に牛小屋が??
驚いていると、不動産屋のおっちゃんは、、、
「いやー、長年この物件紹介してますけど、隣にこんな牛小屋があったなんて気づきませんでしたねー。こんなニオイもしたことなかったし、物件の住人から苦情とかも来たことないし。クサいのは今日だけかもしれませんよ。ハハハ。」
よく見てみたら、住宅地図にあった「○○農場」の○○は、その物件のオーナーの苗字と同じ。明らかに同一人物です。
長年そのオーナーと付き合いがあって、しかも実際に何度もこの物件を紹介している不動産屋が、牛小屋の件を「知らない」という可能性は極めて低い。というか、明らかに知っていた・・・
嫁の嫌な予感は見事的中。物件の予約をキャンセルし、手付金を返してもらいました。
追い打ち
「いやー、危なかったな~」と話しながら、不動産屋を後にして予約したホテルに向かっていると、携帯に電話が入りました。さっきの不動産屋のおっちゃんです。
不動「寺本さん、いいニュースです。さっき言ってた物件に空きが出ました!」
寺本「さっきの物件って何でしたっけ?」
不動「あの、駅の西側の物件です。」
寺本「でも、駅の西側って、東側に比べて、、、」
不動「そうです。便利な方です!」
寺本「・・・・」
不動「明日、一緒に見に行きませんか?」
「こいつ、信用できん!」
明らかに、さっきまで東側が便利だと言っていたし、事実もそうなのに、西の物件が空いたからと言って突然駅の西側をプッシュし出したのです。
結局その不動産屋(全国チェーンの結構有名な業者)は信用できないので、「もういいです」と断ることに。
ホテルに泊まって次の日、場所を変えて一から出直し、別の業者で運よくいい物件が見つかったので、晴れて横浜の住人になることができました。
セールスで絶対にやっちゃいけないこと
時に僕らは、このようなセールスを受けることがあります。
言ってることがコロコロ変わったり、その商品やサービスの欠点を隠されたり(場合によってはウソをつかれたり)、本当はいらないようなものを強く勧められたり。実際の対面セールスだけじゃなく、セールスレターやメルマガなどでも、こんな経験があると思います。
例えそれで商品が売れても、その販売者や会社に対する不信感や不満が残ることになり、二度とそことは取引したくないと感じるんじゃないでしょうか?(たとえそれが安い値段のものでも!)
そしてその「悪い噂」はいい噂の何倍ものスピードで広がっていきます。自分の知り合いがその会社と取引しようとしていることを知れば、「やめた方がいいよ。なぜなら以前・・・」と止めにかかるでしょう。
どんな商品やサービスにも、メリットとデメリットがあります。
そしてメリットは、ある人にとってみればデメリットでもあり、もちろんその逆のパターンもあります。
考えてみれば当然のこと。人が「何に価値を感じるか」にはそれぞれ違いがあるからです。
便利な東側が気に入る人もいれば、静かな西側が気に入る人もいます。「便利さ」に価値を感じている人に、「西側」を勧めるのは信用を失う行為。やっちゃいけないことです。(しかもウソつくなんて言語道断!)
キーワード:「正直」
一番大事なのは、お客さんに商品を売ることじゃなく、お客さんと「いい関係を築くこと」。商品を売って上がった売上は、「一時の収入」ですが、お客さんとのいい関係は、「長期にわたって収入を生む、資産」になります。
これは、億万長者メーカー、ダン・ケネディが教えてくれた、安定したビジネスを作る思考法のヒントです。
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PS:「正直」に言います。
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