日本人って奥ゆかしく、謙遜をして周りに気を使うすばらしい人が多いと思います。
先日もあるセミナーで参加者の一人が「私にはそんな大層なことは出来ないので…」と、せっかくの講師からのアドバイスをやらないことを堂々と講師の前で宣言してました。
いかにも日本人らしい謙遜した言葉です。
でもそれを聞いていた私は、「あ~あ、もったいない…」と心の中でつぶやきました。
can notではなく○○ notでいこう
出来ないとは、英語でいうと「can not」。
出来ないというのは、「○○したいのに、しかたなくやらない」という意味です。
この行間というか日本語の裏に隠れている「○○したいのに、しかたなく」という部分がとても重要なのです。
この「○○したいのに、しかたなく」という部分は既にネガティブなセンテンスですね。
本当は○○したいのだけど、自分の状況や能力などを勝手に自分の都合の良いように解釈してしまって、○○を達成するための挑戦から逃げている文章です。
人間は誰でも自分の決定や行動を否定されたくないもの。
それは他人からだけでなく、自分自身の心からも否定されたくなく、挑戦しないという決定を「自分には○○は出来ない」という言葉で正当化しているだけです。
私も過去に、この「○○出来ない」という言葉を多用して挑戦から逃げていた時期がありました。
この時の私は、何をやっても人生が豊かにならず、何か人生に満足感のようなものが不足していました。
そんな時に、私の父から教わった言葉が私を変えました。
「お前は出来ないといっているけど、やりたいのか、やりたくないのか、どっちなんだ?やりたいのならやればいいし、やりたくないのならやらなければいい。出来ないかどうかは、やりきってから決めるものだ!」という言葉。
そうです。そこには「私の意志」が欠落していたのでした。
すべての判断を「can not」で逃げてしまい、「will not」でものを考えていなかったのです。
出来るか出来ないかなんてどうでもよいのです。そんなこと、正確に判断できるほど、日本人で自己分析と環境分析の出来る人間はほとんどいません。
しかも自分の成長余力なんて誰にもわかりません。
人はチャレンジすればするほど、成長していき、何でもこなせる人間に育つものです。
だからその瞬間は「can not」でも将来は「簡単に出来る」かもしれません。
その瞬間の判断で簡単に自分の成長を止めてしまってはもったいないのです。
父の教えをいただいてから以降、私は「can not」ではなく、「will not」、
もっとわかりやすい言葉でいうと「want to」という「○○出来ない」ではなく、
「○○したい」かで行動をするかしないかを判断するようにしています。
そこには自らの明確な意志が存在します。
そしてその意志に従って行動をしていくので、人生がとても充実していきます。
「will not」は「将来○○しないだろう…」という意味です。
それに対して「will be」は「将来○○の状態だろう」という意味です。
これらは未来の状態を表す単語です。
この単語、つまりwill単体の意味に、「意志」という意味があります。
つまり「will」は未来を予測する意味合いを持ちながら、そこに明確に自らの「意志」が存在しています。
松下幸之助さんのひとこと
昭和四十年頃、松下幸之助さんの「ダム式経営」講演会でのエピソード。
講演後の質疑応答で、とある経営者が、
「松下さん、人材でも、お金でも、ダムのように蓄えておくことが必要で、大切だということは良くわかりました。でも、どうしたらダムのように、人材やお金を集めたらいいんでっしゃろ。それが知りたいんですわ。」と発言したときのことです。
一体、「経営の神様」松下幸之助氏は、どう答えるのか。
しばらく、沈黙の後、松下幸之助氏は、こう言ったそうです。
「そりゃあ、まず、そう思うことですな!」
この言葉を聞いた講演会場にいたほとんどの聴衆の反応は
「ええっ?」
「なんや、そんなことなんか。わしらいつも、アレコレ思い疲れてますがなあ。」
「そんなんやったら、誰でも知ってますがな。」
「経営の神様が、そんなことを…。わしら、儲かる秘訣を教えてほしいんや。」
と、様々に批判めいた反応をしたそうです。
ところが、そんな中、聴衆の後方で、熱心に聞き入っていた一人の若き経営者がいました。
その人物とは、世界的企業の京セラ創業者である稲盛和夫氏でした。
この言葉を聞いた稲盛和夫氏は、
「そうなのか。そうだったのか。何よりも、思うことが大切だと、幸之助さんは語っているのだ。『思う』ことの中には、それだけ素晴らしい力が潜んでいるのか!そのことを、松下幸之助さんは、言っているのだ!」と思ったそうです。
そしてずっと思い続けることで今の地位を築いたようです。
この話が本当の話かそうでないかは諸説ありますが、この思い続ける、いわば「意志」が人の成功と関わっていることであることは明白であるからこそ、このような話が今でも語り継がれているのです。
会社の社員とその家族の人生を支えている社長であるあなたは、自分の行動や決定に必ず「意志」をプラスする責任があります。
何となくの判断で出来ないと言わないようにしてください。
ビジネスに失敗しても成功してもどんな時でも経営者は自己責任。
どうせ、駄目なら自らの「意志」に基づいた行動をして失敗したいものです。
経営者よ、意志を持て…。
どうせやらないなら、cannotではなくwill notで…。
経営者なら意志を持ってやらないことを決めてください。
本日はここまで。
-鈴木しゅん
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