From:北岡秀紀
FROM:北岡秀紀
かなり前のことですが、私が役員として入っていたあるベンチャー企業にン千万円の受注をもらったことがあります。
数年後、この発注をくれた社長さんと再開したときに、その時の話になったので、長年疑問に思っていたことを質問しました。
「たくさん競合もアプローチをしていたはずなのに、なぜ○○(社名)みたいな実績もない小さな会社に発注をしてくれたのですか?」
答えは、「北岡クンは靴を揃えたから」でした(笑)
はじめは何かの例えかな?と思ったのですが、そのままの意味でした。
社長のお宅に招待いただいたとき、正しい作法で靴を脱いだことを評価してくれたのです。
玄関で正面を向いたまま脱ぎ、次に玄関の方に振り返って、相手にお尻を向けないように向きをすこし斜めにして膝をついてかがみ、そして手で靴の向きを玄関の方に向けてそろえる、というやり方ですね。
(多くの人は、家にあがる際に身体の向きを変えて靴を脱ぎますが、それは正しくありません。)
競合も含め全員を呼んだけれど、正しい靴の脱ぎ方をしたのは私だけだったそうです。それを見て、発注はこの会社にしよう、と決めたそうなのです。
「小さなこと」でチャンスを逃す
ココだけ切り取れば、出来過ぎていてドラマみたいな話ですが・・・
「小さなこと」で取引が決まることは珍しくありません。
そして、それよりも多いのが「小さなこと」で取引がなくなってしまうことです。
先日、あるデザイナーから案が提出された時、私の名前の漢字が間違っていることを指摘しました。
次のメールでデザインの修正と共に名前も修正がされていました。
しかし、名前を間違っていたことを詫びる文面はありませんでした。
それはおかしいんじゃないか、と指摘したところ、ようやく申し訳ありませんでした、という連絡がありました。お詫びなのにメールで。
しかも、修正の際に詫びなかったことに対してのお詫びはありません。
「コイツはないな」
と私は判断しました。
今回の仕事ぶりを見て良ければ、長期で契約をする心づもりでした。
起業したての彼からすれば、相当大きな金額で、です。
しかし、それはなくなりました。
名前間違えたくらいで目くじら立てるなよ、と思うかもしれません。
誤解をして欲しくないのは、間違えた事そのものを怒っているわけではないということです。
間違いは誰でもありますから。
しかし、その名前の間違いに対して、相当な失礼をしてしまったと捉えられるかどうか、というのは非常に大きいというのが私の価値観です。
その価値観を共有できないから、今後は付き合えない、と判断したのです。
「小さなこと」が大きな差を生む
そして、「小さなこと」の重要性は普段のビジネスでも同じです。
例えば飲食店で、テーブルが一杯のところに店員が次の商品を持ってきて「お待たせしました~」とだけ言って、皿を置くためのスペースを空けさせられた、という経験はないでしょうか?
気にならない人にとっては気に留めさえしないことですが、気になる人にとっては「何で客が動かないといけないんだっ!」とイラっとする原因になります。
皿を動かすという一手間を惜しむかそうでないかで、次から来ない・・・と決められていたら。そら恐ろしいものがありますね。
こんなふうにほんの「小さなこと」が可否を決めることは珍しくありません。
そして怖いのが、やってしまっている本人に悪気がないことです。
しかも、クレームを言うわけではなく、単に次から注文しないだけなので、やってしまったことに気付くことができません。
そして、「小さなこと」を積み重ねて、「なんか儲からないな・・・」と悩むばかり・・・そんな経営者は少なくありません。
逆に、うまくいっている経営者は、「小さなこと」をとても大事にしています。
全ての「小さなこと」に気付ける人はまずいないでしょう。
しかし、それを気付こうとするだけで、「小さなこと」に気付けるようになります。
「小さなこと」に気付かないと・・・ということすら、気付いていない人が大半ですから。
追伸
もしあなたが、いじめられっ子だった、親の顔色をうかがうタイプの子だった、とすればチャンスです。
友人の接客コンサルタントによると、そういう経験を持った人の方が「小さなこと」に気付ける素養があるそうです。
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