From:ダン・ケネディ
From:ダン・ケネディ
小売店、スーパーマーケット、ディスカウント・ストアでは、棚に商品を並べている店員に、探している商品がどこにあるかを尋ねるたびに、このようなことが起こります。
店員が指を指して、分かりにくい道順を2つほど、早口でまくし立てるのです。「3番の通路を左に行ったところか、8番の通路の家庭用品の反対側かもしれない」と。
私は、ある日曜大工店で同じような質問をしました。その店員は、「5番か6番の通路に、お探しのものがあると思います。一緒に行って見てみましょう。」と言って、私について来ました。そして、その売り場で働いている店員を見つけると、私のことを紹介して、それから自分の持ち場に戻ったのです。
これこそが、カスタマー・サービス・ディプロマシー(顧客サービス外交)です。
全く進歩のない圧倒的多数の人たちの考え方
私は店長を探して、このようなことについて本を書いている者だと自己紹介をし、その店員の接客について質問してみました。「これは、このお店の方針ですか?」と。「はい」と店長は答えました。
「私たちの店では、全ての店員に、そのような接客を指導しています。しかし、少なくとも、この時間に勤務している者の中で、常にそのような接客ができているのは、彼だけです。彼にはまだ知らせていませんが、次にポストに空きが出たら、彼を店長補佐に昇進させるつもりです。」
情熱を失って冷笑的になることは簡単です。みんながそうだからと、低い方に流されるのは簡単なことなのです。自分の仕事を嫌だと思ったり、従業員に不信感を持ったり、お客に不満を感じたりすることは、たやすいのです。あなたの「牧草地」にチャンスが少ないということを、もうひとがんばりの努力をしないことの言い訳にするのは、たやすいのです。
そうです。このようなことは皆、たやすいのです。そして、たやすいからこそ、決してしてはならないのです。
どの会社でも、どの組織でも、さらには、どの職種でも、卓越し、進歩し、成功する人たちは、比較的、少数派です。圧倒的多数の人たちは、全く進歩しないのです。そして、私が今、述べたような考え方、冷笑的な考え方は、この全く進歩のない圧倒的多数の人たちの考え方です。私たちの社会では、たやすいことをしても、得られる報酬はごくわずかです。
進歩する人たちの考え方は全く違っています。前向きで、楽天的で、明るいのです。これは、確かに難しいことです。しかし、私たちの社会では、難しいことをすれば、得られる報酬も大きいのです。
私の長年の観察では、このような考え方を受け入れ、真に卓越したカスタマー・サービス・ディプロマットになろうと全力を尽くした人たちは、確実に昇進を遂げています。
よりやすやすと、より楽しく仕事する方法
さらにもう一つ、カスタマー・サービス・ディプロマシーが上手くなることで、仕事がよりやすやすと、より楽しくできるようになるという、説得力のある理由があります。
仕事中によるストレスやイライラの一番の原因は何でしょうか?何が、私たちを疲れさせ、不機嫌にさせ、あるいは、度重なる頭痛の原因になっているのでしょう?ストレスの元になっているのは何でしょうか?
ストレスやイライラの多くは、日々絶え間なく生じる、小さなあつれきや衝突によるものです。
このようなあつれきや衝突のほとんどは、カスタマー・サービス・ディプロマシーのスキルを用いて無くしてしまうことができます。
ポジティブなフィードバック(好意的な反応)が得られれば、気持ちが良いのは当然です。
心理療法の理論である交流分析では、「ポジティブ・ストローク(受け取った人が、気分が良いと感じる存在認知)」という専門用語を使うことが一般的です。「ワーム・ファジー(あたたかいお愛想)」といった言葉が使われることもあります。ポジティブ・ストロークは、精神的なハグ(抱擁)のようなものと言えます。
カスタマー・サービスの仕事をしている人は皆、このような望ましく、気持ちの良い、ポジティブなフィードバックを促す、大きなチャンスを手にしているのです。
そして「ポジティブ・ストローク」を得ることは簡単なのです。ただ、あなた自身が、それを与えれば良いのです。あなたが与えたものが何倍にもなって戻って来るというのが、普遍的な法則なのです。
いくつか、簡単な例をあげましょう。
– ありがとう。またお目にかかれて光栄です。
– お話できて、楽しかったです。
– 感謝します。
– 素敵なジャケット、ネクタイ、服装ですね。
一日に何度、このようなちょっとしたストロークを相手に与えることができるか、目標を設定するのです。
そうすることで、あなたが仕事の中で経験することが、実際、劇的に変わってくるでしょう。
ポジティブ・ストロークについての前向きな規律とは?
ポジティブ・ストロークについて、ある博士は、望ましい、前向きな規律を考え出しました。
電報に似せた小さな黄色いメモ帳を作って、それを「ありがとう電報」と名付けました。これは、元々、一日の終わりに、博士自身や博士の妻、子供たちが、その日、他の人たちと経験した楽しかった出来事について感謝する時間を持てるようにと、博士が自分の家族のために作ったものです。博士の家族は皆、毎日、何通もの「ありがとう電報」を書いて送ったのです。
ある総合ファミリー雑誌が、この一家の一風変わった「ありがとう電報」の習慣について記事にしたことがきっかけとなり、多くのハリウッド・スターや財界人などの著名人が、この「ありがとう電報」の習慣を真似するようになったのです。
もちろん、仕事をする上で、イライラしたり不愉快に感じたりすることはつきものです。上司や同僚、お客が理不尽なことを言い出すかもしれませんし、その他の問題が起こるかもしれません。しかし、その日、何が起こったかということよりも、それに対してあなたがどう対応したかの方が重要なのです。
あなたが、その不愉快な出来事に、自分の態度や気持ちをコントロールされてしまい、それによって、その日一日を台無しにしたとしたら、結局、誰が喜ぶのでしょう?あなたにとって、何の得にもなりません。あなたの会社やお客にとっても、何の得にもならないのです。
不愉快な出来事にこだわって、そのような状況を嘆いたり、それについて話したり、そのことでくよくよし続けていたら、その人は不幸になり、不愉快な人間になり、そして、同じような人がまわりに集まって来るのです。
カモが背中の水を振り払うように、私たちが自らを律して不愉快な出来事を振り払い、その日に出会った気持ちの感じの良い人たちに心を集中させることができたら、私たちは、前向きで感じの良い人間になるのです。
ダン・ケネディ
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