エルビスは死んでしまった有名人の中で最も惜しまれた人物ですし、彼のことを知らない人はいないでしょう。生死に関わらず、これほど知名度のある人は他にはいません。

実は、ほとんどの人は自分自身やそのビジネスが現実よりもっとよく知られていると思い込んでいます。広告など出したことのない小さな町の業者が「私が誰だかみんな知っていますよ」などと言うのを私も聞いたりします。そうかもしれません。となると、例えばグレッグ・ニールセンが自身の住む小さな町でよく知られているのにも納得できます。しかし彼がその地域でナンバーワンなのは、常に大々的に、そして継続的に宣伝をし、ダイレクトメールを送っているからなのです。

プラチナメンバーのローリー・ファットは、レストラン業界で「有名」だと思っていませんか。彼は何年も何年も業界紙の全ページ広告、記事、ダイレクトメールなどで自分の物語を語ってきましたし、大きな短期集中講座を開き、車を景品にして、何千人もの会員を獲得してきましたからね。

あなたが彼ならば、「すべてのレストラン経営者は私の物語を知っている」と考えるかもしれませんね。最近私は面白半分で、レストランを開店する友人2人と、すでにレストランを持っている4人の経営者に、ローリーのことを知っているかどうか聞いてみました。すると全員が彼の広告を目にしたことも、ダイレクトメールも受け取ったことも、名前さえ聞いたことも誓ってない、と答えたのです。

事実、彼の行ったマーケティングを全部足して合わせても、それは本当にちっぽけな、取るに足らないものなのです。『Think And Grow Rich』（邦題『思考は現実化する』）を読んでいるべき典型的な起業家たちの中でも、実はナポレオン・ヒルのことを知っている、もしくは彼の本を読んだことがある人はたったの5%しかいないんですよ。

トニー・ロビンズのインフォマーシャルを放映するには少なくとも1億ドル（100億円）ものお金がかかっていますし、彼は映画にゲスト出演したり、ラリー・キングの番組で死刑反対の立場として議論したりしてもおかしくないほどの有名人だと考えている人もいるでしょうね。

まったく。

道を歩いている10人に、いいえ、本屋さんにいる10人に彼の写真を見せて、彼が誰だかわかった人には100ドル（1万円）あげると言ってみてください。きっとほとんどの人が知らないと思いますけどね。非常に小さな隙間市場でも同じことです。5000人以下の会員しかいないNSA（National Speakers Association=米国スピーカー協会）において、私は何年にも渡り半泣きの形相でダイレクトメールを送り、宣伝し、休むことなく嫌になるまで私の物語を語り続けたのに、未だに長年の会員から「なぜ今まであなたからのダイレクトメールを受け取っていないのでしょうね？」だとか「なぜあなたのことを知らなかったんでしょう？」などと聞かれるのですよ。

これがその理由です・・・

(a)ブランドやイメージ作りよりも、ROI（Return On Investment=投資回収率）を把握しやすいダイレクトレスポンス・マーケティングを重視しているからです。十分な資金と忍耐を持っていない限り、前者ではドミノ・ピザやFedEx（フェデックス、宅配会社）のように「この商品といえばこの会社しかない」というような市場のマインドを捉えることなどできませんからね。少なくともこの生涯では無理でしょう。

(b)ある程度容易に市場マインドをコントロールできる小さくて扱いやすい市場を手に入れるために、商品やサービスをできるだけ細分化し、隙間産業に入り込むことを重視しているからです。

(c)そして私はクライアントに次のようにアドバイスしています。宣伝をし続け、ダイレクトメールも送り続け、ニュースレターも毎月送付し、年間25回から52回「連絡」をして、あたかも毎回初めてのように自分たちの物語を語り続けること。

－ダン・ケネディ