From:藤岡将貴
あなたは、1台30万円のウォークマンがあるのを、知っていますか?
最近、あるビジネス誌を読んでいたら、この30万円のウォークマンに関する記事がありました。このウォークマンは、もっとも普及されている機種の約20倍という”超”高額商品で、金メッキを施したりアンプにこだわったりと、オーディオマニアが驚く付加価値をつけているそうです(僕は音にはこだわりがないので、詳しいことはわかりませんが…)。この30万円のウォークマン、昨年の10月に発売以降、反響は上々で、異例のペースで売れているそうです。
他にも、1本30万円とか60万円とか、ありえないほどの高額なワインボトル入りのお茶を売っている会社もあるそうです。このお茶を作っているベンチャー企業は、昨年のG7伊勢志摩サミットで各国首脳に提供される飲料の一つにも選ばれたそうで、毎年25%増で販売本数を伸ばしているとのことです。
レスポンスのメルマガを読んでいるあなたなら、ダン・ケネディも「価格を上げろ!」と言っていることはご存知かもしれませんね。でも、価格を上げたらお客さんが離れるのでは、、、と不安で、なかなか踏み出せずにいる人も多いのではないでしょうか?または、実際、価格をあげてみたものの、思ったような効果が出なかったり、むしろ、売上が下がった、という人もいるかもしれませんね?でも、一方で、このウォークマンやワインボトル入りのお茶のように、思い切った高額商品の販売でうまくいった例もあります。
そこで今日は、この記事を読んで僕が感じた、”超”高額商品の販売でうまくいったポイントを、事例を紹介しながら、お話したいと思います。
福岡県のある家具屋では、従来の高級タイプである40万円前後のテーブルのなんと100倍もする、4320万円ものテーブルや4000万円のシャンデリアを販売していて(もはや普通に家が買えちゃう値段ですね…)、これらの”超”高級家具の売上が、同社の全売上の2割を稼ぎ出しているそうです。同社の社長は「”普通の”高級家具分野では激戦ゾーンで、労多くして実り少ない。それに対し、4000万円のテーブルは競合もなく、独壇場になる」と言っています。つまり、100倍の価格の方が、かえって商売が楽になってうまくいく、ということです。
レスポンスのメルマガを読んでいるあなたなら、セールスメッセージにおいて、注意を引くことがまず重要であることは、ご存知だと思います。注意を引く方法はたくさんありますが、その1つが「強いオファー」を提示することです。
通常、強いオファーというと”低価格”を思い浮かべることが多いでしょう。「定価の◯%オフ」とか「半額」とか。さらに、「無料」までいけば、よりオファーは強くなります。ですが、逆に、10倍レベルの思い切った高価格も注意を引くことができそうです。
例えば、東京にある甘味どころのお店では、かき氷を販売しています。通常、かき氷と言えば、あなたもせいぜい数百円程度の価格を思い浮かべると思います。が、このお店で販売しているかき氷は、なんと3000円もします。この3000円のかき氷。スイーツファンの間で話題沸騰となり、「前代未聞の『3000円かき氷』を一口味わいたい」と全国からお客さんが集まるようになったそうです。
これが、1、2割の価格アップではお客さんが離れる可能性がありますが、でも、それが10倍となると話は全く変わってきます。とんでもない値付けの裏側にある付加価値の正体を知ろうと、新しいお客さんが集まってくる、とのことです。
どちらの例も、1、2割の価格アップではなく、10倍とか100倍の価格だからこそうまくいった例と言えるでしょう。これが、競合より1、2割高い程度なら、お客さんから見たら、既存の商品の単なる値上げに感じられて、ただ売れなくなるだけかもしれません。ですが、それが10倍とか100倍ともなると、既存商品とは”別の棚にある違うもの”、と感じられて、興味を持ってもらえる、選んでもらえる、ということですね。
このように、10倍とか100倍の高額商品の販売でうまくいった例がある一方で、”常識的な”価格アップで失敗に終わった例もあります。
同記事によると、例えばユニクロがそうです。2014年秋に5%、2015年春にも10%ほど値上げしたものの、客数が減少。逆に、2016年に入り今度は価格を引き下げたがお客さんは戻って来ず、2016年8月期の国内ユニクロ事業の既存店客数は前期から5%減少、営業利益は13%減となったそうです。他にも、定食屋の大戸屋も高単価のメニューを導入したことで客離れを起こすなど、先ほどのウォークマンや家具、かき氷の例と比較すると中途半端とも取れる”常識的な”値上げで失敗に終わりました。
なぜ、そのような常識的な価格アップではうまくいかないのか?同記事の中ではその理由として、これまでは、値上げをすれば販売数自体は減りますが、価格アップによりそれ以上に売上が増える、というふうに思われていました。ですが、市場が成熟して消費マインドが上がらない現代では、中途半端に値上げをすれば、想定以上に販売数が減るようになったから、とのことです。
では、価格を上げて売上を増やすにはどうしたらいいのか?その1つの方法が、もっと大胆に高めの値決めをして、その分、新たな価値を創造した方が、今の時代は活路が開ける、ということなんですね。
でも、あなたは、そんな10倍レベルの高額商品を作っても、それにお金を払ってくれるお客さんなんて、本当にいるの?と思うかもしれませんね。でも、実際いるのです。そして、あなたが、その人たちに売ることも可能なのです。それには2つの理由があります。
1つは、インターネットの発達です。例えば、広島県にある木工メーカーでは、1万円もするけん玉を製造しています。けん玉というと、市場価格は2000円前後だそうで、100円ショップでも売られています。ですが、このメーカーでは、プロ選手とそれを目指す人たちをターゲットに他社の5倍もする1万円のプロ仕様のけん玉を製造しています。
けん玉のプロと言われても、日本ではまだ馴染みが薄いと思いますが、世界的には「KENDAMA」としてブームにもなっているそうで、アメリカでは競技人口が100万人を突破、プロチームも誕生しているそうです。そこで、このメーカーでは、市場の中心をアメリカにして、インターネットで販売するようにしました。その結果、新作をインターネットで売り出すと、毎回1分ほどで生産予定数が売り切れるほどの人気だそうです。
このように、たとえ、あなたのビジネスの商圏には、高額商品を欲しいと思うようなお客さんがいそうになかったとしても、日本全国を見渡せば、あるいは、世界中には、欲しいと言う人はたくさんいる場合もあるのです。そして、その人たちに販売するのに、インターネットを使えば、それが可能になるのです。
カナダの証券会社「RBCウェルス・マネジメント」の2015年の発表によると、日本で金融資産を100万ドル(約8000万円)以上を保有する人口は245万2千人で、アメリカに次いで世界第2位。人口に対する割合ではアメリカを上回ります。その人口は2014年からの1年間で11%増加しています。また、スイスの金融機関「クレディ・スイス」によると、2015年から2020年にかけて69%の増加率で増えると予測しています。
このように、いわゆる富裕層と呼ばれるような人たちが増え続けているため、十分に高額商品を販売するチャンスはある、ということです。と言うよりむしろ、彼らはもはや平均より1~2割良い程度のモノには関心を持たないのではないでしょうか?実際、先ほどの例にあった4000万のテーブルを買ったのも、イタリアの大富豪が買ったそうです。もちろん、そんな富裕層があなたの周りに都合よく集まっている、ということはないかもしれません。ですが、1つ目の理由にもあげたインターネットを使えば、彼らに売るのも可能になると言えるでしょう。
もちろん、そこまでの富豪でなくとも、市場で出回っている商品よりも、もっと高価格帯の商品を欲しがる人、現在市場にある商品には満足していない人たちは、一定数いると言えるでしょう。
例えば、輸入車販売大手のヤナセは、メルセデス・ベンツやBMWなど200台の高級車だけを貸し出すレンタカーサービスを始めました。そのターゲットは、新幹線はグリーン車を利用し、高級ホテルに宿泊するような、先ほどの富裕層とまではいかないものの、比較的お金を持っている人たちです。最近では便利な都会暮らしにあえて自家用車を持たない人たちも増えていますが、彼らにとっては自分にふさわしいと思えるような、「借りたいレンタカーがない」という不満があるそうです。
他にも、先ほどの1万円のけん玉のように、その分野のプロや、一部のマニアなど、10倍の値段を払ってでも欲しい、という人がいるジャンルの商品もあるでしょう。
いかがでしたでしょうか?今回の記事の事例は、少し極端と思える人もいるかもしれません。ですが、そんな10倍レベルの価格アップでうまくいったケースがあることもまた事実です。もし、あなたが、価格を上げたい、高額商品を販売したい、と考えているのなら、あなたは、この事例から、どんなアイデアを思いつくことができるでしょうか?ぜひ、考えてみてくださいね(もちろん、10倍価格を上げるなら、それに見合った価値をきちんと提示できなければ詐欺になってしまいますので、ご注意を…)。
-藤岡将貴
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