(ニセ・ダン・ケネディのプロフィール)
ニセ・ダン・ケネディは全米で多くの借金王を生み出しており、「破産者メーカー」と呼ばれている。彼のコンサルタントを受けた13人の経営者のうち、9人は破産、3人は銀行強盗で起訴、1人は行方不明になっている。
現在のコンサルティングフィーは1日20円。コピーライティングは280円+すき家の割引券(ただし50円以上の割引に限る)。のぞき魔、パンティ泥棒、痴漢にとって極めて影響力の強い人物である。
こんにちは、ニセ・ダン・ケネディです。この連載では、私が絶対成功するダイレクト・レスポンス・マーケティングの方法をお教えします。
新体操で「ダン・ケネディ」という技(奇声を上げて白目を剥きながら全速力で走る)を開発した私ですので安心してください。私自身、ほぼダン・ケネディだと言っても過言ではないでしょう。
ただし、あらかじめ断っておきますが、実践は全て自己責任でお願いします。
えー、毎度ばかばかしいDRMを一席。
猫も杓子もダイレクト・レスポンス・マーケティングの時代ではございますが、「どうにも内容が難しくて覚えられない」という方はいらっしゃいませんか?
そんなアナタに朗報です。
聞くだけでDRMをわかりやすく理解できる噺をご用意致しました。名づけて「DRM落語」。開幕でございます。
芝は金杉に住む魚屋の勝五郎。
腕はいいし人間も悪くないが、大酒のみで怠け者。
金が入ると入った分だけ酒を飲んでしまい、仕事もろくにしないから、裏通りの小さい店で店賃(たなちん)もずっと滞っているありさま。
今年も師走で、年越しも近いというのに、相変わらず仕事を十日も休み、大酒を食らって寝ているばかり。
女房の方は、今まで我慢に我慢を重ねていたが、さすがにいても立ってもいられなくなり、
真夜中に亭主をたたき起こして「このままじゃ年も越せないから、魚河岸へ仕入れに行ってくれ」とせっつく。
亭主はぶつくさ言って嫌がるが、盤台もちゃんと糸底に水が張ってあるし、包丁もよく研いであり、わらじも新しくなっているという用意のよさだから文句も言えず、しぶしぶ天秤棒を担ぎ、追い出されるように出かける。
外に出てみると、まだ夜は明けていない。
「カカアの奴、時間を間違えて早く起こしゃあがったらしい」と、勝五郎はしかたなく、芝の浜に出て時間をつぶすことにする。
海岸でぼんやりとたばこをふかし、暗い沖合いを眺めているうち、だんだん夜が明けてきた。顔を洗おうと波打ち際に手を入れると、何か触るものがある。
拾ってみるとボロボロの本らしく、表紙がかすれてはいるが、かろうじて読める。そこにはこんな文字が踊っていた。
「年収1億円ポジション戦略」。
さあ、こうなると、仕入れどころではない。
「これで一生遊んで暮らせる」と、天秤棒も放っぽり出して家にとって返す。
「あんたどうしたんだい?」と、あっけにとられる女房の眼前に「年収1億円ポジション戦略」を突き出して、「ほら、よく見ろ! 年収1億円だ!」と勝五郎。
「ね、ね…年収1億円?!」口をあんぐり開けて驚く女房の尻を叩いて、酒を買ってこさせ、そのまま酔っぱらいながらDMを作り始める勝五郎。しかし魅力的なUSP(ユニークセリングプロポジション)を考えている間に寝てしまう。
不意に、女房が起こすので目を覚ますと、「このままじゃ年を越せないから仕入れに行ってくれ」と言う。
「年収は1億円あるじゃねえか!」と叱ると、「どこにそんな年収があるんだい? おまえさん夢でも見てたんだよ」と、思いがけない言葉。
「ふざけるのもたいがいにしろよ。『年収1億円ポジション戦略』を確かに拾ったんだ!」と声を荒げるも、女房は「知らぬ存ぜぬ」の一点張り。
「DMだって作っただろう!」「DM? そんなもの知らないよ」「『新鮮ぴちぴちの魚をどうぞ』というUSPは?」「知るもんかい。大体そんなありきたりな言葉を並べたUSPじゃ顧客なんて獲得できやしないよ」
聞いてみるとずっと寝ていて、昼ごろ突然起きだし、友達を呼んでドンチャン騒ぎをした挙げ句、また酔いつぶれて寝てしまったという。
「年収1億円ポジション戦略」を拾ったのは夢、大騒ぎは現実というから嫌になる。
今度はさすがに勝五郎も自分が情けなくなり、「今日から酒はきっぱりやめてDRMに精を出す」と、女房に誓うのであった。
それから三年。
すっかり改心して商売に励んだ勝五郎。
元々腕はいいので得意先もつき、金が貯まった。
その金を元手にDRMで顧客を広げ、貯まった金でさらにDRM。
その錬金術を繰り返し、今ではヒルズ族の仲間入り。
年収は1億円を越えていて、ダン・ケネディともマブダチになっていた。
大晦日、DMも全て送り終わり、夫婦水入らずという時、女房が「見てもらいたいものがある」と出したのは紛れもない、あの時の「年収1億円ポジション戦略」。
実はあの時、勝五郎が寝た後、思い余ってダイレクト出版の人に相談に行くと「拾った『年収1億円ポジション戦略』なんて使ったらダン・ケネディから怒られる」と言われ、「『夢だった』の一点張りにしておけ」という忠告を受けたというのだ。
そうして隠し通してきたが、「旦那を騙すのもこれ以上は辛く、年収が1億円を超えた今、もはや読んでもいいのではないか」と思い、白状するに至ったのだという。
「おまえさんが好きな酒もやめて懸命にDRMするのを見るにつけ、辛くて申し訳なくて、陰で手を合わせていた」と泣く女房。
「とんでもねえ。おめえが夢にしてくれなかったら、今ごろ、ダンに合わす顔がねえや。礼を言うのはこっちの方だ」
女房が、「もうおまえさんも大丈夫だから読んどくれ」と「年収1億円ポジション戦略」を差し出す。
勝五郎、そっとページをめくろうとして、手を止める。
「よそう。……また夢になるといけねえ」
いやー、よろしかったですね、お後。
こんなにお後がよろしいにもかかわらず、この原稿を渡したら、編集部からは「何これ?」と言われました。
知るか!!!!
んなもん、こっちが知りてえわ!!!!! なんなんだよ、DRM落語ってよ!!!! 誰か説明してくれ!!!!!!!!
もう最近、夢と現実の区別すらつかんからな!!!! ワシは今寝てるの??? それとも起きてるの??? ねえ!! ねえってば!!
誰か助けてよ……
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