From:山田光彦
「10年後も今の仕事で食べていけるだろうか?」
5、6年前。
僕が京都で自営業をやっていたときに、こんなことを思っていました。
今はうまくいっているけど、僕と同じ商圏に大きな会社が進出してきたら、対抗するのは大変だな。それに、インターネットが出てきたこともあって、ビジネスを取り巻く環境の変化が早くなっているな、ということも感じていました。
典型的な例としては、ネットで儲かると言われていたアフィリエイトや情報起業。こういった方法が、5年ぐらいで、すぐに競合だらけになって利益が出なくなったり、広告が規制されたり、ということがありました。
僕たちのような小さな会社だけではなく、僕が子供の頃、すごく楽しませてもらった任天堂。これだけ大きな会社であっても、スマホゲームにおされて業績が悪化しています(2014年は円安の影響もあり、4年ぶりに黒字になったようですね)。パソコンを直販して成長してきたDELLも去年、業績が悪化したことで大規模なリストラを実施。ipadなどのタブレット型PCの登場で、パソコン市場全体が小さくなったことが原因のひとつです。
任天堂もDELLも一時は飛ぶ鳥を落とす勢いで、成長していた会社です。
ですが、今ではかなり厳しい状況になっています。
これだけ大きな会社でも、数年もしくは十数年で厳しい状況に追い込まれるわけですから、僕たちのような小さな会社は、10年後どうなっているかなんて、まったくわからない。そう思っていました。
いつかは衰退するから、その時は、何か新しいことをはじめるしかない。ビジネスなんてそんなもんだ。そんな風に考えることもできます。
ですが、1920年頃のアメリカにこういった厳しい状況をうまく乗り切った事例がありました。
今のように家の近くにコンビニや大きな小売店がない時代。豊富な品ぞろえのカタログ通販で成功していたシアーズ・ローバックという会社がありました。
ですが、1920年頃に、都市化が進み、自動車や高速道路が普及。店舗へのアクセスもよくなったことで、通信販売市場が伸び悩んできたのです。つまり、今まで通販で商品を買っていた郊外の人たちが、自動車で店舗に行って買うようになった。その結果、通販市場全体が伸び悩んできたのです。
顧客の行動が変化してして、通販を利用しなくなったことが原因で、業績が下がっていたのです。ですので、通販事業をやっている限り、業績を回復するのは難しい状況でした。
そこで、シアーズ・ローバックは事業を通信販売から「郊外の巨大駐車場付きの大規模店舗」に切り替えました。その結果、3年ほどで192店舗を出店。1941年には600を超える店舗を出店するまでに成長しました。
シアーズ・ローバックはカタログ通販がダメになった。だから、通販をやめて、大規模店舗を運営するビジネスをはじめた。というわけではありません。
シアーズ・ローバックがやっていたのは「郊外の人たちの、豊富な品揃えの中から商品を選んで、買いたい」というニーズを満たすこと。なので、顧客の行動が、店舗に行って買うというように変化したので、その変化に合わせて、顧客のニーズを満たす方法を変えただけなのです。
具体的には、通販ではなく、自動車で店舗に行って買う、というように顧客の行動が変化しました。その行動の変化に合わせて、駐車場付きの大型店舗で、顧客のニーズを満たすようにしたのです。その結果、1941年には600店舗を超える店舗を出店するまでに成長することができたのです。
ビジネスはいい商品を作って顧客に提供することでも、
技術を上げて高い品質のサービスを提供することでもありません。
もちろん、通販をやることでもなければ、お店をやることでもありません。
ビジネスは顧客のニーズを満足させるプロセスです。
顧客のニーズを満足させることが目的で、商品・サービス、その他のものは手段に過ぎません。
そして、顧客のニーズは基本的になくなるものではありません。時代の流れによって、顧客のニーズを満たす手段がかわるだけです。(あまりにも完璧に顧客のニーズが満たされてしまえば、なくなってしまうこともあるかもしれないですが)
なので、商品・サービスを提供することではなく、顧客のニーズを満たすことに集中すれば、時代の流れによって、ビジネスが衰退するリスクをかなり低くすることができるでしょう。
ビジネスで、大切なのは商品ではなく、顧客です。
あなたは自分のビジネスで、どんな顧客のニーズを満たしていますか?
山田光彦
PS.
もう1つ、時代によって左右されないのは、顧客を獲得するスキル。マーケティングやセールスライティングのスキルです。人間心理は10年、20年でかわるものではありませんし、売上に困っている社長が世の中にいる限り、このスキルへのニーズはなくならないでしょう。
【ザ・レスポンス】の最新記事をお届けします