小川 今日のレスポンス・ポッドキャストは、楠瀬健之さんをゲストにお招きしてお送りしたいと思います。よろしくお願いします。
楠瀬 よろしくお願いします。こんにちは。
小川 楠瀬さんは、「虎の穴」の前にやっていた「パートナー養成講座」に来ていただいていて、その後はビジネススクールにも来てもらっていたから、2年ぐらいほぼ毎月会っていたんですよね。
楠瀬 そうですね。今日はめっちゃ懐かしい感じですね。
小川 ねえ。いつもね、楠瀬さんがされるかき氷の話があるんですが、それがめちゃめちゃ面白いんです。そうしたら「聞いてみたい、聞いてみたい」という声があったので、今日はゲストにお招きしてお話をしてもらおうかと。
楠瀬 ありがとうございます。
小川 ちなみに、今は何をされているんですか?
楠瀬 今は、コピーライティングを持っているインフォマーケターみたいなポジションでやっていますね。
小川 具体的にはどういうことを?
楠瀬 具体的に言うと、店舗ビジネスのようなリアルなビジネスをやられている方がいますよね。その人のビジネスを流行らせるんです。だけどそこには再現性が必要ですよね。そこで、コピーライティングの要素を入れたマーケティングツールを作っていく。で、それを構築した後は、どこが使ってもある程度は同じ結果になるので、それを横に展開していくっていう。
小川 つまり、コンサルということですよね。楠瀬さんが店舗ビジネスをやっているわけじゃない?
楠瀬 僕は1個もやっていないです。
小川 でも、もともとはやっていたんですよね。
楠瀬 そうですね。迷走しながら(笑)。かき氷もそうなんですけど、いろんなことをいいなと思って。まさしく「隣の芝生は青い」を地で行くというか(笑)。
小川 今はダン・ケネディ教みたいになっているでしょ? 楠瀬さんと会うとケネディの話しかしないって聞きましたよ(笑)。
楠瀬 もうダン・ケネディ馬鹿というか。レネゲイドミリオネア・システムを聞いていると、ケネディの格言みたいなのが山ほどあるんですよね。5分に1回ぐらい、人生を変えるような発言がある。だから、普通の会話でも出ちゃうんですよ。
小川 「パートナー養成講座」にも来ていただいていたし、今はマーケティングもわかってると思うんですけど、昔、何も知らなかった若き時代があるわけでしょ? そのころの話を聞かせてください。もともと何をやってたんでしたっけ?
楠瀬 僕は高知県なんですけど、わかりやすい形で言うとキャバクラみたいなのをやっていましたね。
小川 キャバクラは儲かったんですか?
楠瀬 めちゃくちゃ儲けましたね。笑ってしまうぐらい。23歳でお店を出して、月収がすぐに100万になったんですよ。
小川 月収100万だったら、もうスーパースターじゃない? しかも23歳でしょ?
楠瀬 そう。調子に乗っていました。初月で100万で、そこからずうっと上がり続けて、3年で月収300万円までなりました。
小川 それは若かったら踏み外しますよね。
楠瀬 完全に踏み外していました(笑)。毎月それぐらい現金が動いているから、いろんなビジネスに手を出して。居酒屋をやったりバーをやったり、塾をやってみたり。
小川 塾!? キャラにまったく合っていない(笑)。でも、なんで最初にキャバクラを?
楠瀬 僕は中学生のころから金を儲けたいと思っていて、ずうっと模索していたんです。そうしたらある日、ドキュメンタリー番組かなにかでキャバクラの特集を見て、「あっ、これしかない」となりまして……。
小川 めっちゃ単純じゃないですか。
楠瀬 基本的に行動が先に出ます(笑)。で、20歳のときに地元で一番流行っている店で働いて。
小川 ほう。働きに行ったんですね。
楠瀬 そこで半年ぐらいすごく働いて、また別の流行っているお店に働きに行って。流行っている店をはしごしたら、いろんな店のエッセンスが吸い上げられるんです。それから営業の会社に1回入って、ゴリゴリの営業もやってみて。で、23歳で自分の店を出しました。
小川 それで、そんなに速攻、儲かったんですね。
楠瀬 もう速攻ですよ。びっくりしましたね。
小川 そんなに儲かったのに、何で辞めたんですか?
楠瀬 風俗営業になるので、結構取り締まりが厳しいんですね。広告もガンガン出せないので、そういうものは天井があるなと思ったんですよ。あとは、これは人間の良し悪しではないんですが、雇っている人の意識レベルが低いんです。働いてくれる女の子たちも、一生やるつもりで働くビジネスではないわけで。
小川 ぶっちゃけた話、大企業に就職する男子、女子と同じ年齢で比べたら、やっぱり質が違うってことですよね。
楠瀬 そうですね。仕方なく来ている人もいますし。だから、再現性がないな、ずっとケアしないといけないなって。それと地方なので、お金のあるところに人が群がる習性があるんです。
小川 群がってくるんだ?
楠瀬 うん。やっぱりどうにかしてそこのお金をこっちにも引っ張ろうみたいな人がいて。それで、これを一生やるのも厳しいし、違うことをやろうかな、と。
小川 それはしんどかったですか?
楠瀬 しんどかったですね。虚勢を張り続けている感じです。見栄もあるし、格好もつけるし。ただ、自分にとってよかった部分もあって、そのときにいい時計、いい車、服、靴、何から何まで一流にこだわたんです。だから、今はやりたいとは思わないです。
小川 逆に。
楠瀬 自分に自信がないから飾っちゃうんだけど、今はユニクロとかで全然いい。僕、月に10万ぐらいしかお金を使わないです。
小川 話、戻ってもいいですか。
楠瀬 はい、戻りましょう。脱線し続けちゃう。
小川 で、どんなことをやったんですか?
楠瀬 いろんなことをやって、ついにかき氷にたどり着くわけです。まだ日本になかった、ふわふわのかき氷。今はもう結構いろんなところにあるんですけど、台湾スイーツのふわふわのかき氷。食感が全然違って、これは絶対に流行る。自分も食ってみて、これは絶対に来る、と。
小川 うまかったですか。
楠瀬 うまかったです。新しいと思うし。ケネディもいつも言っているけど、人は効果があるものより新しいものが好きだと。僕もそれに完全に飛びついちゃって。
小川 「来た!」と。
楠瀬 で、やっぱりフランチャイジーの話だったんですよね。四国にまだないから……。
小川 本部をやりませんかって?
楠瀬 そう。成果を出せば、四国を統括してもらいたいって。
小川 なるほど、なるほど。
楠瀬 これはめっちゃおいしいなって思ったんですよね、まだガキだったし。なので、2000万ぐらい突っ込んでやったんです。たしか6月ぐらいから始めたと思うんですけど、まだ目新しいのでお客さんがチョロチョロ、チョロチョロ来て、利益も多少出るかなって感じで。で、7月になって、テレビCMもやったんです。何でやっちゃったのかわからないんですけど。300万ぐらいかけたのかな。
小川 へえ。ローカルで?
楠瀬 そう、ローカルで。それでそこでも月100万ぐらいは利益が出て。それだけ売れれば。
小川 なるほど。「来た、来た」と。
楠瀬 ただ、そのときにいろんな人に言われたのが、「冬はどうするの?」って。「いや、冬でも売れるでしょ」と。
小川 どういうことですか?
楠瀬 かき氷だけど、ふわふわだから、「氷ほど冷たくない、だから売れるでしょ」って思っていたんですね。でも、お客さんからすれば、冷たいから買っている。客・市場・商品としたら、商品のみにしかフォーカスしていないという。なのに「別にこれ、冬でも食えるやつだ」って言ってやっていて。もうてきめん、ちょっと涼しくなり出したら売上ゼロです。かき氷は売れない。
小川 マジ、ゼロですか。
楠瀬 マジゼロ。もう売上が5000円ぐらいいったら、「今日はよかったね」っていう。全然よくないですよ。だって、人件費が1万円ぐらいかかっているわけですから。
小川 ちなみに原価ってどんなものだったんですか?
楠瀬 そのかき氷は、500円で売ったときに原価が250円ぐらいかかる費用だったんですね。潰れて、ビジネスを勉強し始めてからめちゃくちゃびっくりしたんですけど。そもそもうまくいくわけがない(笑)。そういう知識がなくって。
小川 そして冬も売れない。
楠瀬 もう三重苦ですよね。原価が50%だと、消費税とかロイヤリティーとか……。
小川 えっ、ロイヤリティーは別で?
楠瀬 もちろん別です。500円の商品、仕上がりに250円、ロイヤリティーは別で5%。
小川 じゃあ、55%は絶対にかかるわけだ?
楠瀬 絶対にかかります。で、人件費なんて当然30%ぐらいいくわけで、家賃は10%くらいかかるじゃないですか。ないですよね、利益(笑)。だからもう、めちゃくちゃ売ったら利益が出る、みたいな。
小川 果てしないですね。
楠瀬 もしかすると、月100万ぐらい出ていると思っていた7月、8月も、実は出ていなかったかもしれない。僕はそのとき、それをまともに計算するようなレベルの事業主ですらなかったんです。
小川 とりあえずプラス思考なだけで。
楠瀬 そうです。ケネディがよく言う、“売上がすべて”みたいなのをやっちゃっていましたよね。そんな感じで1年、さんざん赤字を出して。結局4000万ぐらい赤字を出しちゃったんです。
小川 マジで?
楠瀬 10、11、12、1、2、3、4ぐらいは売上ゼロで、月に200万ぐらい赤が出るわけですよ。
小川 そんなに赤が出るんですか。
楠瀬 モチベーションがすごかったから、3店舗ぐらいやったの(笑)。
小川 まだ売れるかどうかわからないのに?
楠瀬 7月に売れた時点でイケるって、もう1店舗出して、8月にも売れたからもう1店舗出して、ドカン(笑)。
小川 どれぐらいのときに感じたんですか。「あれ?」って。
楠瀬 もう9月中旬には完全に。週末の売上が半額以下になって。ああいうのって週末とかに売れるんですね。どんどん割ってきて、ゼロが当たり前になって(笑)。そうしてはっきりとゼロになったのは10月からです。ゼロの行進が続く。ずうっと続くわけですよね。そのときに、冬も売るものが必要だと考えて、タピオカドリンクをやることにして。タピオカドリンクは今でも日本でそれなりに流行っていると思うんですけど、「これでイケる、これで冬は越えられる」と思ったわけですね。
小川 それは別のフランチャイズなんですか?
楠瀬 同じです。これも台湾スイーツみたいなもので。でも、冬に冷たいものは売れんということで、ホットで出そうとしたんですね。
小川 ホットタピオカですね。
楠瀬 そう。でもある日、おばちゃんがめっちゃキレたんですよ。実は、フランチャイズの指導では、60度ぐらいのぬるさで出してくださいって言われていたんです。でも、売れないから「ぬるいからかな」と思って、「もっと熱くして出そうよ」と従業員に言ったんです。タピオカってストローで吸うじゃないですか。それがホットなわけですよね。そうしたらおばちゃんがむちゃくちゃキレて。「どうしたんですか、美味しくなかったですか?」「いや、そういうことじゃない。あなた、ちょっとこれを飲んでみろ」と。で、僕がタピオカを吸ったら、すっごい熱い塊が……。吸うときに「危ない、これはヤバい」って(笑)。
小川 もちもちですから(笑)。
楠瀬 結構粒がデカいので、親指の先ほどの大きさのやつが3〜4粒、ズバンスバンって来るわけですよ。シャレになんない、大やけどですよ。
小川 危ない!!
楠瀬 飲み物を飲んでいて「危ない」って、ないじゃないですか。あの瞬間、いろいろ考えが改まりましたね。結局、何でもそうだと思うんですけど、部分だけ見ている人ってずっと同じ失敗を繰り返すんですよ。そんなノリでしたね。
小川 それはどうなったんです?「危なっ!」となって。
楠瀬 おばちゃんに平謝りです。「すいません、お代は返しますんで。新しいのを……」「いいよそんなの」みたいな。そりゃあそうでしょう。新しいのは要りませんよね。そんな気分じゃない(笑)。で、それからはぬるいタピオカをずっとやっていたんですけど。でも考えたら、ぬるい飲み物は要らない(笑)。
小川 確かに。ぬるいのは要らないですよ。そりゃあ温かいコーヒーを飲みに行きます。
楠瀬 うん。そもそもリサーチが弱くて、タピオカドリンクを飲む人がホットを欲しがっているかどうかのリサーチすらしていない。ただ冬は寒いから温かくしようというだけのベクトルで。当時は「いいものを用意すれば来るだろう」みたいな。
小川 それがいいものじゃなかったと?
楠瀬 全然いいものじゃない。単品で考えれば、それなりにお客さんも来てくれるけど、でもビジネスってずっと続いていかないといけない。そういう視野もなかったんです。
楠瀬 あのときに、どうにかしないといけないと思って知ったのが、ジェイの『ハイパワー・マーケティング』だったんです。僕は正直、マーケティングを知りたければ、あれよりいい本はないと思うんですね。全体像が見えるから。マーケティングは全体像が見えないと使えないので。あれがあって今がある、と。
小川 へえ。タピオカを熱くすれば売れるだろうというとこから『ハイパワー・マーケティング』?
楠瀬 行きました。ケネディがよく言うんですけど、行動する人には2パターンあって、むちゃくちゃうまくいっている人は何でもいいから試してみようと思って行動する。僕が最初に儲けたときはそのパターンですね。もう1個のパターンが、どうしようもなくなってシャレにならん状態で、わらをもすがる思いで行動する。この2パターンの欲求がめちゃくちゃ強い。だから、めちゃくちゃ貧乏なやつも、実は売れる客なんだ、みたいなことを言っているんですね。僕、そのときは後者です。いいと聞いたものは全部、書籍もいろいろ試して。今、あれと同じだけの努力をしようといってもできないですね。
小川 なるほど。
楠瀬 生きるか死ぬかで本を読んでいますから。しかも全部立ち読み。金が、いや(笑)、金がないわけですよ。だってシャレにならんぐらい赤字ですから。で、立ち読みでずっと読んで。
小川 きついっすね。
楠瀬 きつかったですね。
小川 だって、年間4000万でしょ?
楠瀬 その後、もう1000万、借りちゃったんですよ。移動販売のために。冬を越えて勝負だってことで、イベントとかだけで売れば、固定費が少なくなってイケるんじゃないかと。
小川 店舗じゃなくて、移動販売でということですよね。
楠瀬 店舗でダメだったら移動でイケると。商品に恋しているもんだから……。この商品は売れるんだ、売り方が悪いんだと。
小川 で、プラ1000万、投入。
楠瀬 それでまた300万の広告費と、車のキットで300万ぐらい入れて。結局、それが2年目だったからお客さんが飽きていて(笑)、今度は夏もずっと赤字。
小川 じゃあ移動もうまくいかなかったんですか。
楠瀬 全然うまくいかなかったですね。売れない、というか、やっぱり原価率の問題(笑)。
小川 原価率55%だから?
楠瀬 そうそう。売れても利益が残らない仕組みだったんです。
小川 意味がわからないです。
楠瀬 そう。そのときの解決策はビラをデカい声で配るというものだった。
小川 「いらっしゃいませ!!」みたいな(笑)?
楠瀬 そう、そんな感じです。そのときにビラを作り始めたんですが、それがダイレクトマーケのきっかけですね。多少反応もとれて。ただ、ゴールが無理だから。原価率……。
小川 どっちにしろ?
楠瀬 うん。どっちにしろですよね。
小川 ダイレクトレスポンスだと原価率が2割以下じゃないときついみたいな話が。
楠瀬 そうですね。実際に、すべてのビジネスは原価率が高すぎるとうまくいかないですよね、絶対に。
小川 そこがネックだけど……、かき氷で55%!? 意味がわからないじゃない。
楠瀬 意味がわからない。だから、特殊な氷なんですよ。
小川 どういうことですか?
楠瀬 スタートアップでロットが小さいから、原価も上がるんですよね。ああいうフランチャイズ系のものって、ロットがデカければ、原価はだんだん下がってくるじゃないですか。でも、全国に3地域ぐらいしかなかったので。そうするとロットが全然ハケない。原価の高さは、そういうのもあったと思います。
小川 にしても、氷でしょ?
楠瀬 ただの氷じゃないですよ。味のついている乳製品みたいな氷なんです。氷自体に味がついている。
小川 ああ、そうなんですか。ほお。でも氷ですよね。
楠瀬 そう。これがまさしくみんなの反応。で、僕の返しは、こいつらはバカだ、この可能性が見えないのかと。ゼロから1のビジネスチャンスは、人生でそんなに何度も会うもんじゃないぞと。でも、ケネディもいつも言っているけど、ゼロから1は個人では絶対にやっちゃいけない。それは大企業にやってもらって。だって、資本が違うから。なのに僕は、そのときはすげえチャンスだって。ポジティブを勘違いしている人というのは、足の骨が折れていてうまく走れないのに、「折れていると思うから折れているんだ」みたいな(笑)。僕もまさにそういう思考回路で、「売れないと思うから売れないんだ」って。
小川 なるほど、なるほど。
楠瀬 だから従業員を集めて、朝、ミーティングをしたり。
小川 どんなミーティングをするんですか?
楠瀬 目標とか夢を言わせたりね。もう恥ずかしいからあんまり言いたくないです(笑)。
小川 で、その週もゼロ、みたいな。
楠瀬 ゼロ(笑)。でもビジョンは常にデカくて。結果はどうかというと、従業員は過労。タダ働きですよね。そんな状態で。
小川 ブラックじゃないですか。夢を語らせて、売上ゼロで、過労(笑)。
楠瀬 「これがいつか形になったときに、お前には徳島の権利を任せるから」みたいなね。
小川 戦国大名みたいですね(笑)。
楠瀬 もうそんなノリです。でもそのとき僕は、軽く自慢なんですけど、普通はそういうとき、動けなくなるんですよね。でも、僕はやらんと死ぬし、やったわけです。
小川 やるしかない。
楠瀬 で、レスポンスがとれて、ちょっとずつ調子に乗って、これをどうすればいいかって考えて。そのとき、人は言葉に反応するんだってわかったんです。
小川 なるほどね。
楠瀬 それですぐさま、飲み屋のほうに全部取り入れたんですよ、ダイレクトレスポンスを。会員制にしたり、DMを毎月送ったり。で、すぐに復活しました。
小川 そのときに飲み屋もやっていたんですか?
楠瀬 飲み屋を並行して。
小川 そっちで儲かって、その金をかき氷屋が食い尽くす。
楠瀬 補填(笑)。まさしくそのとおりです。そんなのがないと、やっぱりそんなに赤字は出せない。だからかき氷屋を閉めたとき、すごくホッとしました。だって閉めた瞬間、月収200万に戻るわけですよ。
小川 「終わったあ!」みたいな。
楠瀬 もう1回うまくやれって言われても、やれる自信はないですね。本当に今考えても、どうやって乗り切ったんだろうと思うくらい。あれは本当に、すごいなって思う。
小川 それ、わかる気がする。当時を振り返って、「あれ、あのとき俺、どうやって家賃を払っていたんだろう」とか、ありますよね?
楠瀬 ある銀行にお金を借りようと思って通帳を持っていったら、「えっ、これでどうやって生きているんですか?」って言われたんですよ(笑)。
小川 「“生きて”いるんですか」(笑)。
楠瀬 ちょっとサバイバルスキルが付きすぎちゃった(笑)。サバイバルスキルを付けちゃうと、時間より金が重要になってしまう。でも、やっぱり時間が一番重要です。金で時間を買える分は、全部金で買うようにしています。今、必死です(笑)。
小川 いやあ、僕はこの話を聞くの、3回目か4回目ぐらいですが、やっぱり面白い(笑)。
楠瀬 オチも、何から何までバレているから、めっちゃ緊張しましたよ(笑)。でも、もうあのときの数字は見たくないですもんね。一応保存しておかないといけないから保存していますけど、その期限が終わったら、絶対にもう……。
小川 捨てる(笑)?
楠瀬 捨てますね。でも、あれがあるから僕、いいコピーが書けると思うんですよ。うまくいかない起業家さん、ビジネスオーナーさん、今そういう人が多いから、気持ちが痛いほどわかる。結局、そういう経験をしていない人は、想像でやるしかない。それが実体験ですから(笑)。
小川 実体験は違いますよね。
楠瀬 うん。いいコピーライターになりたかったら、1回しょうがない店舗ビジネスをやってみたらいい。絶対にいいコピーライターになれる。
小川 その地獄を味わってみろ、と。
楠瀬 まさしく地獄ですからね(他人事のように)。モチベーションって、上げるとか下げるんじゃなくて、上がったり下がったりするもんじゃないですか。売れない店だと、絶対に下がりますよね。だから、数字も地獄、店の空気も地獄。でも、本当に人生で一番いい経験だと、今でも思っていますね。
小川 まとめると、原価率が高いビジネスはするなと。
楠瀬 はい。利益がビジネスだっていうことですね。
小川 あとは何かありますか。そこから学んだものは。
楠瀬 僕はレネゲイドミリオネア・システムをエンドレスで聞いているんですけど、ケネディのすごく好きな言葉があって……。今日も言っていますね、ケネディ、ケネディって。
小川 言っている、めっちゃ言ってる。
楠瀬 ケネディがミルティアにインタビューして、そこで「起業家は大きいことがいいことだと思っている。でも、大きければいいとは限らない」というようなことを言っているんですけど、ビジネスってまさしくそれだと思うんです。コンサルでもそうなんです。社長さんたちは、ビジネスで売上を上げようと一生懸命で、全部を上げようとするんですけど、でも、収益があるところ、もうちょっと収益が増やせそうなところで組み立て直すだけなんですよね。だから、もしご自分のビジネスを持っている方であれば、自分の収益のいいビジネスを1回振り返ってみるっていうのはすごく重要なことかな、と。
小川 真面目なことを言っているじゃないですか。
楠瀬 いやいや。ふざけたやつだと思われたら困るからね。だけど、それは本当です。うまくいっていない人って、売上はすごく上がってくるけど赤字、みたいなのが多かったりするんですよ。それこそ今、美容外科はすごく不景気らしいんですが。
小川 そうなんですか。
楠瀬 昔はアホみたいに儲けていたんですけど、ガンガン倒産しているらしいんです。
小川 何でですか?
楠瀬 広告費が高すぎるんですよね。美容外科の、超有名なところで半分。年商の半分が広告費。
小川 それは聞いた覚えがありますね。50%っていう数字。
楠瀬 だからもし、今、コピーライターの方、コンサルの方、ウエブコンサルの方がいたら、美容外科にがんがん営業をかけちゃえば、かなりおいしい仕事がとれると思いますよ。
小川 へえ。
楠瀬 だって50%の広告費を10%だけ転嫁して、40%に下げちゃえば、入ってくるわけで。潰れる理由は全部、広告費の過剰らしいです。ただ美容外科自体は、原価率はすごくいいんです。保険適用外なので。でも僕、今でもめっちゃ景気がいいかと思っていたら、もう全然らしくて、バブルの10分の1と言っていましたね。どんな業界でもそうかもしれないですけど。
小川 じゃあ、冬のかき氷みたいな感じですか。
楠瀬 まさしく。
小川 テレビCMを打っては、みたいな。
楠瀬 完全に。だから、広告費はやっぱりこれからダイレクトレスポンスに変えないと厳しいですよね。
小川 厳しいですね。特にウェブなんかは意味がないですからね。じゃあ、そういうわけで、タピオカはぬる目ということで。
楠瀬 そうです。ぬるいか冷たいやつ。原価率は20%か30%でやりましょう。
小川 ありがとうございました。
楠瀬 ありがとうございました。