From:ダン・ケネディ
前回まで、苦情対応の5つのサクセス・ガイドラインを話しました。
これを記憶に残るまで繰り返し読み、あなたの一部にすることができれば、顧客の苦情に上手く対応できるようになるでしょう。
今回は、このガイドラインを実践することで名声を得た男と、それを怠ったためにチャンスを逃した男の話をしましょう。
デール・カーネギーという男が、「How To Win Friens And Influence People(直訳『友人を勝ち取り、人に影響を与える方法』、邦題『人を動かす』)」という本を書いて、その本に基づく講演会を無料で行なうと宣伝していました。レクチャーはいつも満員で、その本は世界的なベストセラーになったのです。
そこからデール・カーネギー・コースが誕生し、全米各地、さらには、その他多くの国々で展開されているのです。なぜ、この本はこのような驚異的な成功を収めたのでしょうか?
それは、この本があらゆる人々の仕事や私生活における成功と失敗、幸福と不幸について、核心を突くものだったからだと思います。
その核心とは、他の人たちと上手くやる能力です。それは貴重な能力なのです。
億万長者の実業家アンドリュー・カーネギーが、ある年、彼の右腕だったチャールズ・シュワブに、10万ドルの給料と100万ドルのクリスマス・ボーナスを与えたことがありました。カーネギーはこう言いました。
「私が払った給料は彼がしたことに対する報酬で、ボーナスは彼が他の人にさせたことに対する報酬だ。」
レーガン元大統領は、その2期の任期を通じて莫大な人気を誇っていました。近年の大統領の中では最も人気の高い大統領と言えるでしょう。その人気の元となっていたのは、優れたコミュニケーション能力という彼の個性でした。
誰とでも上手くやっていくことのできる人が最も成功し、そして最も幸福になっています。そういう例を、私たちは至る所で見ることができます。
そのような人たちを「ピープル・ピープル(人付き合いに秀でた人)」と呼んでも良いかもしれません。
一方、チャンスを逃した男の話があります。
ある大企業の発送課で課長補佐のポストに空きが出ました。発送課の課長が探したところ、必要な経験を持ち将来の課長候補になり得る人物は、部内に一人しか見当たりませんでした。
その人物はその会社で最古参の発送係で、2番目に古い発送係よりも3年も前から働いている男でした。
「そんなに長く経験を積んでいるのに、どうして彼を昇進させたくないのだね?」と、人事部長がたずねました。
「課内から昇進させるというのが、我が社の変わらぬ方針じゃないか。」
それに対して、課長はこう答えました。
「それは知っています。しかし、発送課で仕事をしている間、彼は仕事に関して、新しいことを学ぼうという意欲をこれっぽっちも見せたことがありません。それに、昇進についてもそれほど関心が無いみたいなのです。彼は、とても頭の良い人間ですから与えられた仕事はきちんとこなしますが、与えられた仕事をこなすだけでは、十分では無いのです。」
その男は、より高給が得られるポストへの昇進のチャンスをふいにしました。
なぜかと言うと、彼は自分が今やっている仕事の重要性を認識できなかったからです。彼は自分の仕事からどんなチャンスが得られるのかが分かっていなかったため、ただ、日々をやり過ごすのに十分な仕事しかせず、昇進へとつながるようなもうひとがんばりの努力をしなかったのです。
アール・ナイチンゲール氏は、能力開発の分野で最も尊敬すべき著者であり講師の一人です。同氏の講演の一つに「グリーナー・パスチャー(直訳すると『青々とした牧草地』、そこから転じて『今よりも良い状態』との意味)」と題されたものがあります。
この中で、同氏は私たちにはより良いチャンスを求めて、どこか遠いところにある「青々とした牧草地」を探そうとする傾向があると指摘します。今いるこの場所を、青々とした牧草地に変えるほうが簡単なのに。
昇進を目指す確かな道のりは、あなたが今いる場所で輝かしい活躍をすることです。カスタマー・サービス・ディプロマシーは、輝かしい活躍を示すのにまたとないチャンスです。
デール・カーネギーやチャールズ・シュワブ、さらにはレーガン大統領を見て気付くのは、人と上手くやる能力、人に影響を与える能力こそ、最も価値あるビジネス・スキルの一つだということです。
それはすなわち、卓越したカスタマー・サービス・ディプロマットとしてのスキルです。
このことについては、次回でも取り上げる予定です。私がこれまでで経験した最高のカスタマー・サービス・ディプロマシーについて話しましょう。
次回をお楽しみに。
ー ダン・ケネディ
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